Josemaría Escrivá Obras
『鍛』は火のごとき書物です。それを読み、そして黙想すれば、大勢の人々が神愛の〈溶鉱炉〉に引き込まれ、聖性と使徒職の熱意を燃え上がらせることでしょう。
 『鍛』は十三章に配分された一〇五五の黙想の栞(しおり)から成っています。多くの考察が著者自身の姿を映していることは明らかです。それらは、日記ではありませんが、オプス・デイの創立者が三十年に亘って霊的な経験を書き記したものです。この個人的なメモの中には師の霊魂に対する神の働きかけが記録されてありますが、師は個人的な祈りの中で繰り返し黙想するためにそれらを書き残していました。
 『鍛』は、キリスト者としての召し出しの光に気づいてから、この世での生活が永遠に向かって開かれるまで、聖性の道を歩む人に付き添ってくれます。

 『あの母親は他の母親たちと同じように清らかな愛に燃えて幼いわが子のことを王子、王、宝、太陽と呼んでいた。私はあなたのことを考えた。そして、善良な母親の言ったことに誇張はなかったと理解できたのだった。心の奥に母親と同じ気持ちを抱かぬ父親などいるだろうか。あなたは、キリストの御血に値するのだから、宝物を遥かに上回り、太陽以上の値打ちがあるのだ。純金であるあなたの心を私が手に取って炉に入れ火とハンマーで鍛え遂には、天然の金を素晴らしい黄金の装身具に変えて私の神、あなたの神に捧げないわけにはいかないのである。』(著者のまえがき)